神風 : ゼロ戦の性能 敵機との比較

ーねじり下げ翼ー

飛行機の機体や前方に対する角度を「迎角」と言うが、零戦の主翼は仰角が胴体側から翼端に行くに従って、下がって行くように出来ていた。

要するに胴体側では上向きだった主翼を途中から捻って翼端では下向きに付けていたのである。

この捻り下げ角度は2.4度と、肉眼では分からない角度である。

これにより翼端失速を防ぎ、大仰角時の横方向の安定性を増し、旋回性能を良くする事が出来た。

空中戦の最中に翼端失速を起こすと、戦闘機はエルロンが効かなくなって横の安定性を失い、旋回不能となる。

低空から急上昇に移った時、普通の戦闘機なら翼端失速を起こすが、零戦は捻り下げ翼を持っているお陰で失速せずに済んだ。

着陸時にも、機体全体が大仰角を取った時に、翼端の仰角は中央よりも弱いため本来なら失速する低速でも失速しないで済んだ。

尚、捻り下げ翼は、96式艦戦から導入されていた技術だった。

ー剛性を弱くしたケーブルー

戦闘機は巡航速度300km/hほどでも、空中戦になると500km/hを超す。

当然、舵に当たる風の強さが速度によって異なるのだが、搭乗員は同じように操作してしまう為、高速時に舵が効き過ぎるという問題が発生した。

零戦は速度が速いため、この問題の解決策が直ぐに盛り込まれた。

それは、操縦桿と補助翼、尾翼の昇降舵を結ぶケーブルやパイプを、力を加えた時、少し伸びる剛性の低い材質に変えるという事だった。

これにより、高速時でもパイロットは操縦桿を低速時と同じように大きく動かさなければならなくなる為、結果として同じように扱えるのだ。

零戦が思い通りに動かせたのはこうした技術があったからだ。

ー油圧式引き込み脚ー

零戦は、日本海軍の単発戦闘機に初めて引き込み脚を採用した事で有名である。

しかし、引き込み脚自体は、既に双発の8試特殊偵察機で採用されており、9試中型陸上攻撃機が受け継ぎ、後に96式陸上攻撃機としてデビューしたのであった。

この引き込み脚は、油圧装置の重量軽減の目的から、片方ずつ引き込むようにしていた。

ー定回転プロペラー

プロペラとプロペラシャフトの角度をピッチと呼ぶ。

従来の戦闘機は固定ピッチプロペラだったが
高速機時代に入ると、速度によって推力と揚力の兼ね合いが変わる為、ピッチの角度を変えて飛行中に状況に応じた最適なピッチを選べる「可変ピッチプロペラ」が登場した。

ピッチが変われば、抵抗が変わってエンジンの回転数も変わる。

そこでエンジンに調速機をつけてエンジンを一定回転数で運転しながら飛行状況に応じたピッチに自動的に変える「定回転プロペラ」が登場した。

零戦には、海軍の要請で日本では初めて定回転プロペラが使われたが、プロペラは日本の技術では独自に作れず、アメリカのハミルトン社の製造権を買って、住友が作った住友ハミルトンの定回転プロペラ(直径3m)が使用された。

ー長大な航続力ー

1941年当時の世界の戦闘機は、航続力が往復で1000〜1200kmという短さだった。

これが零戦だと落下増漕をつけることにより3300kmも飛べた。

日本から飛び立つとベトナムのハノイやフィリピンのセブ島まで行ける事になる。

日中戦争において、航続力4,000km以上を誇る96式陸攻を、護衛できる戦闘機が必要ということで生まれたのが零戦だった。

なお、零戦が航続力を延ばせるのは高度3,000〜4,500m、速度は220〜260km/hという条件だった。

ー徹底した軽量化ー

前述の通り、零戦には強度上許される範囲(部位によっては世界基準を無視)で機体の軽量化が行われた。

すなわち、フレームや各部に肉抜き穴を開けたのである。

これにより当時の米軍機よりも1トン近く、またはそれ以上軽く作ることが出来た。

米兵をして「神秘的な空戦性能」と言わしめた零戦の高性能は、こんな要因も手伝っていたのだ。

なお、主翼桁材に従来の超ジュラルミンよりも33%強度の高い、超々ジュラルミンESDを使用できたことも幸運だった。

ー沈頭鋲ー

機体の各部張り合わせに、ネジ頭が飛び出さないリベットが使用された。

これは96式艦戦で採用されていた沈頭鋲。

鋲が出ると空気力学上、抵抗が増えてしまうため機体の外板に埋め込んでしまおうという発想で、これはドイツのユンカース社の技術を応用した沈頭鋲だった。

ー20mm機銃、7.7mm機銃ー

それまでの海軍機は7.7mm機銃しか搭載しなかったが、世界の趨勢に先駆けて一気に20mm機銃を搭載した。(米軍機は主に12.7mm機銃搭載だった)

これは炸裂弾になっており、B-17の防弾も接近して撃てば貫通出来たという。

対戦闘機の空戦で100mくらいの至近距離から撃つと、主翼に当たればそこからちぎれ、キャノピーに
当たれば操縦席を吹き飛ばし、パイロットを即死させるほどの威力があった。

ちなみに96式艦戦に試験的にこの20mm機銃を搭載して射撃したところ、横揺れがひどくて命中しなかったそうだ。

そこで零戦は、全長を長めにして垂直尾翼も大きくしたが、それでも横揺れは起こったと言われている。

(片方だけ撃つと、特にひどかったらしい)

しかも空中で撃ち続けると、撃っている零戦の速度が落ちるほど、反動が大きかったのだ。

ちなみに機首の7.7mm機銃を撃ってもプロペラに当たらないのは、プロペラの回転と同調して機銃を発射出来る「99式同調発射装置」という装置が付いていたからである。

これはエンジンと直結したカムの衝撃をピアノ線で引き金に伝えることにより、同調発射させていたのだ。

ー卓越した運動性能ー

零戦は設計当初から、格闘戦性能に重点をおいて作られた。

すこぶる軽い機体に捻り下げ翼、胴体に比べて大きくとった主翼面積。

そして意外に知られていないが上昇、背面飛行、急降下、すべてにおいて常に最適な燃料を送り続けるキャブレター。

これらにより、零戦は常に米軍機よりも小さい半径で旋回することが出来、米軍機が大回りで旋回している間に、零戦は素早く背後に回り込んで撃ち落とすことが出来た。

ー零戦の由来ー

零戦は世界で有名な名機であるが「零戦」の制式名称は「零式艦上戦闘機」であるだから「零戦」の読み方はよく「ゼロ戦」と書かれているが正式には「レイ戦」と読むのである。

零は戦時中の日本の年号が紀元2600年にあたる時に制式採用された為である。

試作当時は昭和12年をさす12試艦戦とよばれ略号は「A6M1」であった。

それから零戦は11型、21型、32型、22型、52甲型、52乙型、52丙型、53丙型、54丙型、63型まで発展したが戦ったのは52型までであった。
 
ー構造的な特徴ー

世界最大の航続距離であり当時の世界一流戦闘機の2〜3倍、落下タンクを付ければ5倍もあるという。

軽い機体で普通の戦闘機より1,000kg以上軽い。

これは主設計者の堀越二郎技師が機体の軽量化に骨身を削る努力をした結果で小さなエンジンで軽快な運動性能を失うことがなかったのだ。

 
ー零戦を生んだ背景ー

日本人は古来から攻撃には積極的だが防御は得意としていない民族である。

その民族心理が表れているように零戦も攻撃はかなり強いが防御力は貧弱でありアメリカの頑丈な戦闘機にはかなわない。

もう1つの背景としてメーカー同士の関係にある。まず零戦は三菱重工の設計であるがエンジンはライバルの中島飛行機製エンジンを搭載していた。

このようにメーカー同士のライバル意識を超越していた技術者の心理と国の政策の賜物であると言え、このような事が世界に誇る名機の誕生の背景であった。

[巡航速度]

これは各零戦の種類によって数値がやや違うが300km/h前後(空戦時で500km/h以上)で、これで考えると零戦はF2A、F4F、P−35、P−36、Me109、ハリケーン1、G50、MC200、MC201、I−16、ヤク1、隼より優速であった。

又、D520、Re2002は同等で、やや優速であるのはP−39、Me109E、スピットファイア、ラグ3などであった。

又、零戦より1,300〜1,500馬力という1クラス上のエンジンを搭載していたのでシーハリケーン、シーファイア、P−51、Fw190や更に上の2,000〜2,200馬力級エンジンを搭載しているF6F、F4U、P−47なども零戦よりも高速であった。
 
零戦は速度に関しては馬力が小さい(950〜1,350馬力)為にやや弱い。

[着陸速度]

零戦は艦上機であり、そして日本海軍は離着陸が容易であることを強く要望していたので11型から22型は111km/hに抑えられている。

そして同じ艦上機でもF4F−4は125km/hに達している。

零戦は殆どの機体よりも着陸速度は小さく群を抜いて高性能だったと言える。

 
[上昇限度]

零戦の実用上昇限度は11〜22型が10,080〜10,300mでありF2A、F4F、P−35、P−39、Me109、MS406、MC200、?−16、ラグ3、ヤク1より勝っている。

そしてP−36、Me109Eと同等であり、D520、G50、Re2000、隼、スピットファイア?よりは劣るという。

零戦は上昇限度では、やや劣っていた。

 
[格闘性] 

格闘性は零戦が同時代の戦闘機では、ずば抜けて良い。

米空軍などでは当初、ゼロ戦との空中戦(ドッグファイト)は極力避ける様に指示が出ていた。

この操縦性に匹敵するものは隼のみであろう。

又、イタリア戦闘機も操縦性は重視されていたが零戦には匹敵しなかったと言われる。

このような各性能別に観ていくと速度や上昇限度などの一つ一つの数字だけを見てみると零戦以上の性能を持った戦闘機も少なくはない。

しかし零戦の場合は各性能と攻撃力が最適なバランスであった。

これが零戦の実戦に於ける無敵の強さを誇る要因であった。

又、零戦は艦上戦闘機であるにも拘わらず、陸上戦闘機にも決して劣らない機体であり当時では、「世界最高峰の傑作機」だった。



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